哲学者=山崎行太郎ブログ『毒蛇山荘日記』

哲学者、文芸評論家。慶應義塾大学大学院(哲学)修了。元・東工大講師、元・埼玉大学講師。著書=『小林秀雄とベルグソン』『小説三島由紀夫事件』『それでも私は小沢一郎を断固支持する』『保守論壇亡国論』『ネット右翼亡国論』など。『マルクスとエンゲルス』を「月刊日本」に連載中。近刊予定に『佐藤優対談集』『柄谷行人とヘーゲルとマルクス』など。緊急連絡(レポート)は、メールフォームからお願いします。➡︎https://ws.formzu.net/fgen/S49964599

大江健三郎と曽野綾子。 《曽野綾子大批判》 「沖縄集団自決に軍命令はあったか、なかったか」を論じた曽野綾子の『ある神話の背景沖縄・渡嘉敷島の集団自決』(文藝春秋)は、私にとっては、なかなか面白い刺激的な本である。私は何回も読み返し、熟読した。私が再読、熟読を繰り返す本はそんなに多くない。 何故、再読、熟読を繰り返すのか。それは、この本の内容が、私の「哲学的思考」言い換えれば「存在論的思考」を刺激するからだ。実は、この本に、政治的謀略の匂いといかがわしさを感じるのである。 『ある神話の背景』は、現

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大江健三郎曽野綾子曽野綾子大批判》


「沖縄集団自決に軍命令はあったか、なかったか」を論じた曽野綾子の『ある神話の背景沖縄・渡嘉敷島の集団自決』(文藝春秋)は、私にとっては、なかなか面白い刺激的な本である。私は何回も読み返し、熟読した。私が再読、熟読を繰り返す本はそんなに多くない。

何故、再読、熟読を繰り返すのか。それは、この本の内容が、私の「哲学的思考」言い換えれば「存在論的思考」を刺激するからだ。実は、この本に、政治的謀略の匂いといかがわしさを感じるのである。

『ある神話の背景』は、現在『沖縄戦渡嘉敷島「集団自決」の真実日本軍の住民自決命令はなかった!』と改題の上、WACから刊行されているが、私は、数冊買い求め、それぞれ、付箋や書き込みをしながら読んでいる。読み返すたびに、不信と疑惑が膨らんでくる。


結論から言うと、曽野の『ある神話の背景』は最近の資料分析の結果、疑惑だらけの欠陥本、怪文書、政治的謀略文書でしかないことが判明している。『ある神話の背景』が依拠する『陣中日誌』とはすでによく知られているように、この本には、明らかな「誤字」「誤植」「誤読」がある

たとえば、曽野綾子が論敵として批判・攻撃する大江健三郎が、『沖縄ノート』で「罪の巨塊」と書いた文字を「罪の巨魁」や「罪の巨魂」と誤記し、さらに「罪の巨塊(物)」を「罪の巨魁(大悪人)」と誤読している。

しかも、これらを放置したまま、いまだに刊行され続けている。「自称作家」である曽野の文学感性、つまり、言語への鈍感さに驚きを禁じ得ない。「曽野綾子よ、それでも『作家』なのか」と問いたい。


曽野の『ある神話の背景』は、沖縄集団自決の当事者である、赤松嘉次部隊による『陣中日誌』に全面的に依拠している。さて、この赤松部隊版『陣中日誌』は信用できるか。私の答えは、はっきりしている。信用できない。これは、赤松部隊が「自己弁護」のために、捏造・隠蔽した


「怪文書」の一種だからだ。いくつか例を挙げよう。まず制作時期である。『陣中日誌』は、1970年制作で、赤松部隊の隊員によって執筆された。当事は赤松部隊の沖縄集団自決に対して非難が起きていた頃だ。筆者で赤松部隊員だった谷本小次郎は、戦時中に書かれた『陣中日誌』を

「資料」=「原典」として、それに「加筆修正」を加えたという。しかし、その「加筆修正」が限度を超えて、大幅な加筆修正がなされていることが、資料分析の結果、判明している。つまり、この谷本版『陣中日誌』なるものは、改竄、捏造、隠蔽に満ち溢れた「資料価値ゼロ」の


信用できない謀略文書、怪文書である。谷本版『陣中日誌』には、「編集のことば」として次のような文章が添えられている。〈基地勤務隊辻正広中尉が克明に書き綴られた本部陣中日誌と第三中隊陣中日誌(中隊指揮班記録による四月十五日より七月二十四迄の記録、第三中隊長所有)を

資に取り纏め聊かの追記誇張、削除をも行わず、正確な史実を世代に残し(以下略)〉ということは、辻正弘らによって制作された原本の『陣中日誌』があるということだ。実は私が不信と疑惑を持ったのはこの文章からである。

「聊かの追記誇張、削除をも行わず正確な史実を世代に残し」と書くことがすでに怪しいのだ。もし、それが許されるならどうにでも書き換えや削除、加筆が可能であるということではないか。要するに「谷本版『陣中日誌』」は改竄された第二次資料の価値しか持ちえない代物なのである

特に、問題の「集団自決」の場面は、完全な加筆、捏造である。元の資料(辻正広作の『本部陣中日誌』と『第三中隊陣中日誌』)には「集団自決」の場面は言及されていない。谷本は、1970年当事、手に入る「集団自決」関連の資料を元に、資料を取捨選択して加筆し、


「赤松嘉志隊長は自決命令は出していない」「赤松部隊は最後の最後まで勇敢に闘った」という物語を巧妙にデッチアゲているのだ。曽野の『ある神話の背景』は、そのデッチアゲ文書に全面的に依拠しているのだから、歴史的文献としては失格である。


曽野は、このデッチアゲが見抜けなかったのか。それとも曽野自身も、デッチアゲ文章作成に加担した仲間の一人だったのか。赤松部隊にとって都合が悪いことは触れない『ある神話の背景』には当然、書かれるべきことがいくつか書かれていない。たとえば、曽野は朝鮮人軍夫のことを、


ある程度知っていたにもかかわらずかかなかった。何故か。虐待と処刑の事実を書かなければならなくなるからだ。つまり、そのことを書くと、赤松部隊の擁護どころではなくなる。曽野は、取材の途中で『鉄の暴風』の著者の一人である、太田良博に、朝鮮人軍夫のことを話し、


これを書くと「大変なこと」になると語っている(『太田義博著作集3』より)。つまり、『ある神話の背景』は、赤松部隊にとっての「不都合な真実」を排除しているのだ。

もう一つ。曽野は、渡嘉敷島の女子青年団長で、赤松嘉次と行動をともにすることの多かった古波蔵蓉子という女性のことも書いていない。この女性は、伊江島の女性たちの「処刑事件」にも、目撃か関係者として関わっているはずだ。そして、赤松隊長が、山を下りて米軍に投降するとき


「愛人を連れていた」という告発があったことを『ある神話の背景』では書いているが、この事実もうやむやにしている。実は、「愛人」と誤解(?)された女性は、古波蔵蓉子だった、と赤松嘉次自身が、白状している。


さて、古波蔵蓉子のことでもう一つ。古波蔵蓉子の姪が、『季刊女子教育もんだい』1992年7月号で書いていることだが、「叔母(古波蔵蓉子)は、自分の母親には集団自決場所へは行くな」と言ったそうだ。だから、古波蔵蓉子の母親は「集団自決」することなく、助かったという。

つまり、古波蔵蓉子は、赤松喜次隊長の近くにいて、「自決命令」に関する何らかの情報を得ていたのではないか、と思われる。曽野はこの赤松部隊側の謀略的な資料を無条件に信用していたらしく、論敵となる大江健三郎にまで紹介しようとしている。


と怒鳴ったのです。その一言で、私は大江氏は自分に不都合な資料は読まない人だと分かり、以後、大江氏との一切の関係を断ちました。〉大江健三郎が「不都合な資料」は読まない人だろうか。『陣中日誌』は資料価値ゼロの「改竄文書」だったのである。

むろん、それは曽野の憶断にすぎない。私の判断では、曽野こそ、逆に「不都合な資料」は読まない人であり、書かない人だ。曽野がこの問題に関して沈黙するはずだ。(終)




(続く)





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山崎行太郎が、「月刊日本」に毎号、「マルクスエンゲルス」を連載しています。「月刊日本」3月号には、適菜収との対談「言葉を破壊する安倍政権」が掲載されています。⬇︎
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