山崎行太郎(哲学者、文芸評論家)-Blog『毒蛇山荘日記』

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マルクスとエンゲルス(44) 小林秀雄の「マルクスの悟達」を読む(2)〜〜〜(下へ続く。本文を読みたい人は、ここをクリック。)

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◼️◼️以下が本分です。◼️◼️

マルクスエンゲルス(44)

  小林秀雄の「マルクスの悟達」を読む(2)(続く)


(続く)
 小林秀雄は、「マルクスの悟達」で、こういうことも言っている。

 《理論の為の理論、思弁の為の思弁を、弁証法唯物論は全くの素朴をもって否定する。言葉の厳密な意味に於いて理論の為の理論などといふものはない。ないからこそ否定するのである。》(同上)

 マルクス主義者は、社会的現実を直視せよ、と言いながら、実は「理論の為の理論、思弁の為の思弁」に熱中している人たちだ、と小林秀雄は言っているわけだ。では、マルクス自身はどうか。マルクスは、「理論の為の理論、思弁の為の思弁」ではなく、「商品」という物の分析から始めている。マルクスは「弁証法唯物論」を実践しているのだ。つまり「弁証法唯物論」を生きているのだ。「弁証法唯物論」を理論化したり、体系化したり、という観念論遊戯に耽溺しているのではない。

《人は理論を持つ時、同時にこれを表現する、記号を持つのだ、言葉を持つのだ。この事実の素直な承認から出発して哲学大系を論じようとしたらどうといふ事になるのか。それは或る社会が、個人が生産したイデオロギーである他はあるまい。》(同上)

 マルクス主義者たちの思考は、理論、記号、言葉にこだわる。それはイデオロギーに行き着くしかない。決して作品の創造には向かわない。たとえば、文学研究が、文学作品の創造に向かわないように。文学研究がいかに精緻になり、複雑、高度になろうとも、それはあくまでも文学研究でしかない。文学作品の創造過程は、たとえば詩や小説の創造は、文学研究の延長上にはない。もちろん、たとえば本居宣長の『古事記伝』のように、文学研究が、文学作品の創造に到達することもまれではない。しかし、その場合は、もはや文学研究ではありえない。
 いずれにしろ、マルクス主義者ちのマルクス主義的思考は、永遠に作品創造には向かわないのである。マルクス主義者たちのマルクス主義的思考は、マルクスマルクス的思考とは、似て非なるものである。一見、似ているかも知れないが、まったく別物である。そこには千里の径庭がある。そこには越すに越せない巨大な深淵が横たわっていると言ってもいい。
  
《人は剰りに自明な事は一番語り難いものであり、又語るを好まぬものである。彼等の抱いた認識の根本的基底については暇人のみが認識論的基礎づけの為に騒いだ、そしてさわぐ事だけしかしなかつた。暇人には自明といふ事が一番わかりにくいものである。》(同上)

 小林秀雄が「暇人」と呼ぶのは、マルクス主義者たちのことでる。柄谷行人は、『批評とポスト・モダン』で、小林秀雄三木清を比較して、三木清は、何でも知っていたが、ただ一つのことを知らなかった、と小林秀雄を擁護し、三木清を否定していたが、三木清が理解できなかった事とは、この「自明な事」がそれだろう。では、「自明な事」とは何か。
  たとえば、同じ事を、デビュー作『様々なる意匠』でも言っている。 
 《商品は世を支配するとマルクス主義は語る。だが、このマルクス主義が一意匠として人間の脳中を横行する時、それは立派な商品である。そしてこの変貌は、人に商品は世を支配するといふ平凡な事実を忘れさせる力をもつものである。》(『様々なる意匠』)

 誰でも自分のことは知りがたい。特に、頭脳明晰なマルクス主義者たちは、マルクス主義の理論や体系に目がくらんで、そのマルクス主義の理論や体系が、自分自身にも、自分の思想や言葉にも、当てはまるのだということを知らない。自分は例外だと錯覚している。

 《「問題は懺悔であり、ただそれだけだ。人類は其罪のゆるしを得んが為にはその罪をただあるがままに告白しなければならぬ」と彼(註ーマルクス)はルウゲに書いた。ありのままの告白がとりも直さず客観的理論であった。まことに根性をすて切った達人の業である。》(「マルクスの悟達」)

「ありのままの告白」と「客観的理論」の一致。一見、対立するもののように見えるが、小林秀雄は「ありのままの告白がとりも直さず客観的理論」であると言う。逆説的表現のようにも見えるが、逆説ではない。「ありのままの告白」などというと、「客観的理論」から一番遠い物のように見える。しかし、小林秀雄の分析によるとそうではない。「根性をすて切った達人の業」という観点から見ると、「ありのままの告白」と「客観的理論」の一致する。「根性をすて切った達人」とは何か。たとえば、小林秀雄が考える「達人」とは、マルクスドストエフスキーであるらしい。


マルクスは社会の自己理解から始めて、己の自己理解を貫いた。例えばドストエフスキーはその逆を行つたと言える。私の眼にはいつもかういふ二人の達人の典型が交錯してみえる。》

 では、「達人」の中身とは何か。

《根性は根性、理論は理論なる迷信が、理論と実践とを切り離さうとする。否、切り離して便利がる。今日の風潮に乗じて実践をスボオツと心得てゐるくせに、又さう心得てゐる者に限つて理論と実践は一つだ一つだ、と喧しく叫ぶ。黙々として争闘してゐる人々が何故眼に這入らぬか。又この驕慢な叫びに耳をかたむける弱虫どもが文学の道をあやまるのである。「哲学上に新しい観点を見附けようとする痙攣的な骨折は精神の貧困をあらわす」と。
》(同上)

 「根性をすて切った達人」とは、たとえば「黙々として争闘してゐる人々」であり、理論も方法も体系も知らない素朴な「芸術創造者たち」のことだろう。マルクスドストエフスキーだけが達人なのではない。職人や芸能者も、そして物言わぬ一般庶民もまた達人なのである。 

弁証法唯物論なる理論を血肉とするには困難な思案はいらぬ。ただ努力が要る。理論と実践は弁証法的統一のもとにある、とは学者の寝言で、もともと理論と実践とは同じものだ。マルクスは理論と実践とが弁証法的統一のもとにあるなどと説きはしない。その統一を生きたのだ。マルクスのもつた理論は真実な大人のもつた理論である。》(同上)

人とは「理論と実践の弁証法的統一」を生きている人のことである。つまり理論とではなく、現実と格闘している人のことである。反対に、マルクス主義者達は、マルクス主義という理論と格闘しているのみで、現実とは格闘していない。もちろん、マルクスは現実と格闘した。

《彼にも亦現実だけが試金石であつた事に変わりはない。 》(同上)

現実とは何か。小林秀雄マルクス論の核心は、「現実」と格闘しているかどうかにある。繰り返すが、マルクスは現実と格闘し、その結果が『資本論』である。しかし、マルクス主義者は、そして多くの頭脳明晰な文化人や知識人は、マルクス主義という理論と格闘するのみで、現実と格闘していない。だから、マルクス主義者には存在論的作品がない。



(続く)

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