山崎行太郎の『毒蛇山荘日記』

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小林秀雄とベルグソンとマルクス ■ 既に何回も書いているように、批評家=小林秀雄の誕生は、「 マルクスないしはマルクス主義との対決」なしにはありえなかった、という丸山眞男が『 日本の思想』において提起した説は正しい。小林秀雄の初期作品を読み直すと、「 マルクス」や「 マルクス主義」という言葉が、頻繁に登場することに、あらためて驚かざるを得ない。小林秀雄が文壇や論壇に登場する昭和初期は、マルクス主義全盛時代だったことを考えるなら

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小林秀雄ベルグソンマルクス
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既に何回も書いているように、批評家=小林秀雄の誕生は、「 マルクスないしはマルクス主義との対決」なしにはありえなかった、という丸山眞男が『 日本の思想』において提起した説は正しい。小林秀雄の初期作品を読み直すと、「 マルクス」や「 マルクス主義」という言葉が、頻繁に登場することに、あらためて驚かざるを得ない。小林秀雄が文壇や論壇に登場する昭和初期は、マルクス主義全盛時代だったことを考えるならば、それも当然だったと思われる。小林秀雄は、文学論や芸術論の延長で 、「 近代批評」の地平を切り拓いたのではない。つまり、マルクスないしはマルクス主義という経済学的、哲学的、政治的な思想との対決で、小林秀雄は、文学や芸術的な思想の重要性を主張し、それらを対置したのではない。小林秀雄マルクス主義を批判すると同時に文学や芸術をも批判している。つまり、マルクス主義的な政治主義に対して、芸術主義や文学擁護論を対置したのではない。マルクス主義を批判すると同時に芸術主義をも批判したのである。小林秀雄マルクス主義という実践的な世界観思想と対決することによって、これまで誰も経験したことがなかったようの、未知の深い深淵に迷い込んだのである。そしてその存在の深い深淵から出て来た時、小林秀雄は「 批評家」になっていたのである。その時、小林秀雄が手にしていた武器は何であったか。ランボーでもボードレールでも、もちろんヴァレリーでも、あるいはドストエフスキーでもなかった。私は、それがベルグソンベルグソン哲学だったのではないか、と思う。だからこそ、初期の作品群には、ほとんどベルグソンの名前が、出てこないのだろう。ほぼマルクス主義との対決と論戦が終わり、勝負の決着がついて、しばらく経ってから、つまり、既に老年に差し掛かり 、最後の仕事に取り掛かる頃、小林秀雄は、『 感想』と題して、本格的なベルグソン論を書き始めた。それまでは、「 手の内」を見せるわけにはいかなかったのだろう。私は、誤解を恐れずに言えば、小林秀雄は、ベルグソン哲学を武器に、マルクス主義という一世を風靡した流行思想としての革命思想と、単独で対決し、単独で勝利したのだと思う。それが、「 批評家=小林秀雄の誕生 」という近代文学史上の大事件の真相であろう。私見によれば、小林秀雄のデビュー作『 様々なる意匠』は、マルクス主義批判の論文であり、マルクス主義との戦争宣言の論文であった。《マルクス主義文学、ーー恐らく今日の批評壇に最も活躍するこの意匠の構造は、それが政策論的意匠であるが為に、他の様々な芸術論的意匠に較べて、一番単純明瞭なものに見えるのであるが、あらゆる人間精神の意匠は、人間たる刻印を捺されているが為に、様々な論議を巻き起し得るのである》。小林秀雄が、マルクス主義マルクス主義文学を、主たるターゲットにして、批評的論争を挑んでいることは明らかだ 。しかも、「 あらゆる人間精神の意匠は、人間たる刻印を捺されている 」というところに、ベルグソン哲学の影があることはあきらかだ。さらに小林秀雄は、問題の核心を追求していく。《凡そあらゆる人間の観念学は人間の意識に決してその基礎を置くものではない。マルクスが言った様に、「 意識とは意識された存在そ以外の何物でもあり得ない」のである。ある人の観念学は常にその人の全存在にかかっている。その人の宿命にかかっている 》。ちなみに、良く知られていることだが、『 様々なる意匠』 は、当時の総合雑誌『改造 』の懸賞論文の入選論文だったが、同時に、小林秀雄の『様々なる意匠』を押し退けて一等入選論文は 、後に、長い獄中生活を経て、戦後、共産党議長となる若きマルクス主義者で、共産党員だった宮本顕治の『 敗北の文学( 芥川龍之介論 )』だった。小林秀雄の『様々なる意匠 』は第二等だった。小林秀雄は、『改造 』新人賞で、宮本顕治と同時受賞だったのである。小林秀雄は、デビューと同時に、マルクス主義との対決を余儀なくされる運命にあったと言うべきである。
《》

( 続く)
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本稿は最終稿=完成稿ではありません。今後も加筆修正を繰りお返していきます。最終稿は、メールマガジン山崎行太郎の毒蛇通信』でお読みください。
http://www.mag2.com/m/0001151310.html
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