文芸評論家=山崎行太郎のブログ『毒蛇山荘日記』

文芸評論家。哲学者。慶應義塾大学大学院(哲学)修了。東工大、埼玉大学教員を経て現職。著書=『小林秀雄とベルグソン』『小説三島由紀夫事件』『保守論壇亡国論』『ネット右翼亡国論 』『曽野綾子大批判 』『エセ保守が日本を滅ぼす 』『最高裁の罠 』など。『マルクスとエンゲルス』を「月刊日本」に連載中。近刊予定に『小説・南洲伝』『 小林秀雄とマルクス』『毒蛇山荘日記(1 ) 』など。

『南洲伝』覚書(30)ー重野安繹と高島鞆之助 ■学者文人である重野安繹とは異なり、高島鞆之助は、戊辰戦争にも西南戦争にも参加した軍人である。西南戦争後は、昇進を重ね、陸軍大臣にまで登りつめている。彼もまた、若い時から西郷の配下にあり、西郷隆に恩義を感じる立場にあった。しかし、彼は、西南戦争を、政府軍軍人として戦った。つまり、高島鞆之助もまた「西郷殺し」に加担した人物である。しかし、高島鞆之助の深層心理にもまた、「西郷殺し」に積極的に加担しながらも、何処かに、「後ろめたさ」の感情が残った。「西郷南洲のこと

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『南洲伝』覚書(30)ー重野安繹と高島鞆之助

■学者文人である重野安繹とは異なり、高島鞆之助は、戊辰戦争にも西南戦争にも参加した軍人である。西南戦争後は、昇進を重ね、陸軍大臣にまで登りつめている。彼もまた、若い時から西郷の配下にあり、西郷隆に恩義を感じる立場にあった。しかし、彼は、西南戦争を、政府軍軍人として戦った。つまり、高島鞆之助もまた「西郷殺し」に加担した人物である。しかし、高島鞆之助の深層心理にもまた、「西郷殺し」に積極的に加担しながらも、何処かに、「後ろめたさ」の感情が残った。「西郷南洲のことは自分が一番よく知っている」と大久保利通は言った。何故、西郷南洲を虐殺したあとで、そう言う必要があったのか。大久保利通は、その前に「江藤新平」という政治的ライバルを、新政府から追い出し、そのあと、「佐賀の乱」に追い詰め、最終的には、公開処刑にしている。つまり、大久保利通は、江藤新平に対して激しい怒りと怨みを持っていたらしい。即決裁判で死刑宣告し、梟首の刑、つまり「さらし首」にして、これ以上ないという残虐な殺し方で虐殺している。江藤新平の死に対して、大久保利通は、何か、感じていただろうか。逆に、大久保利通は「江東(江藤)の醜態、笑止なり・・・」という捨て台詞を残している。おそらく、何も感じていない。■しかし、何故、大久保利通は『西郷殺し』のあとでは、「狼狽」したのか。何故、重野安繹や高島鞆之助を使って、「無二の親友物語」という歴史の偽造工作と隠蔽工作をやる必要があったのか。「冷徹な悪役に徹する・・・」のが、大久保利通だったはずではないか。少なくとも、『西郷殺し』のあとでは、大久保利通は、「冷徹な悪役に徹する・・・」ことができなかったようだ。■大久保利通の最後の偽装工作が、暗殺された時、西郷からの手紙を、二通、懐に所持していたという話である。しかも、暗殺の直前まで、馬車の中で、その手紙を読んでいたという。事実かもしれない。しかし、うまく、できすぎている。これらの話を、証言しているのが高島鞆之助である。高島鞆之助は、もちろん暗殺現場にはいない。暗殺事件後、一番先に駆けつけたわけでもない。事件後、いち早く現場に駆けつけ、大久保利通の遺体を自宅に運び入れるこなど、事後処理に尽力したのは西郷南洲実弟=西郷從道である。何故、高島鞆之助が、「証言者」として登場するのか。大久保利通暗殺事件を聞きつけた薩摩藩系の人物が、多数、大久保利通邸に押し寄せたことは間違いない。そこで、そういう話になったのであろう。とすれば、「西郷からの二通の手紙を懐に・・・」という秘話は、高島鞆之助以外の人物がたちも、知っていたということになるが、どうだったのだろう。新聞にまで出ている秘話だが、高島鞆之助が、情報の発信源だったのだろうか。不可解である。




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